【印刷 TIPS】「続 ダイレクト出力・紙貼り。両者の違いとは」

コンドットスタッフのA山です。
みなさまごきげんいかがでしょうか。

 

今回は前回に引き続きパネルの制作手法のお話。「ダイレクト出力制作」「紙貼り制作」両タイプの具体的な違いについてご紹介いたします。

前回の記事はこちらから。

 

比較!ダイレクト出力と紙貼り制作

それではさっそく「ダイレクト出力制作」「紙貼り制作」それぞれの違いを1つ1つみていきましょう。

①画質

画質については紙貼りのほうにやや分があるでしょうか。
ただこれには注釈があります。紙貼り制作の場合、制作のやり方次第で画質が大きく変動するという点です。

 

紙貼り制作における基本的な選択肢は以下のような感じです。

 

・プリント方式(インクジェット出力/オフセット印刷)

これらはおもに制作する物量によって使い分けます。数枚~数十枚のオーダーならインクジェット出力、数百~数千枚のオーダーの場合はオフセット印刷を使うことが多いです。

 

・紙の種類

インクジェット出力の場合だと、代表的なものでマット紙、光沢紙、合成紙ですが、看板用の塩ビシートを用いることもあります。

オフセット印刷の場合はコート紙か上質紙が使われることが大半ですが、選ぼうと思えばインクジェット出力とは比較にならないくらい多種多様な紙が存在します。

 

・ラミネート(PP加工)の有無

表面加工が必要な場合、インクジェット出力でラミネート加工、オフセット印刷でPP加工を施すのが一般的です。見栄えと耐久性がかなり変わってきます。

 

ほかにもいくつか変数はございますが、ともかくもこれらの組み合わせによって、紙貼り制作の画質は変動するのです。目的に合わせて選択が可能と言い換えることもできます。

 

一方、ダイレクト出力制作の場合はパネルに直接出力してしまいますので、印刷紙はスチレンボード表面にもともと貼り付けられている紙しかないということになります。この紙、スチレンボードのメーカーごとに白の色味等は若干異なってきますが、紙質自体にそこまで大きな差はありません。また、画質に大きな影響を及ぼすラミネートやPP加工もダイレクト出力制作においてはおこないません。融通は効きにくいものの、選択肢がない分、材料やプリンタに由来する画質のブレはほぼ起こらないのがダイレクト出力制作であるとも言えます。

個人的な感覚の話にはなりますが、コンドットの場合、インクジェット出力のマット紙や合成紙をそのまま貼付するのと比べたら、UVダイレクト出力のほうがきれいと感じます。ラミネートを施した紙や光沢紙だとインクジェット出力のほうがきれいですね。

 

とはいえ、今のUV硬化インクプリンタはかなり性能が上がっており、伝統的なインクジェットプリンタやオフセット印刷に迫る画質を備えてきています。実際のところ、よほど質のいいプリントと並べて比べない限り、ダイレクト出力制作も普通に「きれい」と感じられる必要十分な画質であるということは申し添えておきましょう。

 

②コスト

コストについてはダイレクト出力のほうに軍配が上がります。ただし、これは数枚からせいぜい数十枚程度を制作するオーダーメイドの場合です。数百~数千枚という量になってくると根本的に話が違ってくるのですが、これについてはコンドットでは扱わない物量でもあり、いまは考慮せず話を進めさせていただきます。

 

さて、なぜ紙貼りがコスト高になるかというと、その工程が大きな理由です。紙貼り制作の場合、まず紙にグラフィックをプリントします。希望があればそのあとラミネートを施します。丁付けの状況によってはこの時点で紙をカットする必要もあります。こうしてプリント紙が出来上がると、その紙をパネルに貼り付けます。そのあと、カット機械に持っていってパネルを仕上がり寸にカットです。
ダイレクト出力制作の場合、パネルをプリンタにセットして出力します。ラミネートは施しません。それをカット機械にかけて終了。

 

つまり、ダイレクト出力のほうが工程がシンプルなのです。これがコストの大きな差になって現れます。シンプルな分、完成までの時間もダイレクト出力制作のほうが短くなります。

 

紙貼り制作のほうが材料の選択肢が多い分、材料費でコストを圧縮することもできるのでは?というツッコミも入りそうです。それはその通りです。材料費だけではなくプリントにかかるコスト(インク、電気代等)も、インクジェット出力だと低くなる傾向ですが、それでも工程の多さからくるコストをカバーするほどの圧縮は難しいですね。そもそも材料費を圧縮するとクオリティが下がってしまうという問題もあります。

※コストについては、制作工場の設備や人員、材料の仕入れ価格、案件の規模等によってさまざま異なってきます。ダイレクト出力制作より紙貼り制作のほうがコストが抑えられ効率も上がるというケースももちろんありますので、ひとまず上記はコンドットの場合の話とお考えください。

 

③その他の要素

その他、ダイレクト出力制作と紙貼り制作の違いがある部分について挙げてゆきましょう。

 

「反り」への耐性
紙貼り制作の場合、スチレンボードに何らかの紙を貼付します。つまり、性質の違う二つの材料を合わせます。これがクセモノで、温度や湿度等の環境要因による伸び縮み率が材料それぞれで異なるため、紙貼りのパネルは、時間経過によって反りが出てくる危険性が高まります。ラミネートを使う場合は三つの材料を合わせることになり、危険性はさらに高まります。

 

このブログでも何度か触れてきたように、スチレンボードというのは反る宿命を持った材料です。時間経過で必ず反りは出てくるものなのですが、異なる材料を合わせる紙貼り制作は、より複雑な「反り力」がパネルに対して継続的ににかかってしまい、思ったより早く反ってきてしまうケースがあるということですね(もちろん反りがあまり出てこないケースもあります。そのあたりの予測は極めて難しく、それもリスクの一つです)。

 

総じて、パネルとインクのみで完結するダイレクト出力制作のほうが時間経過による反りには強いと言えるでしょう。

 

表面の強さ
これは時々お問い合わせがあるのですが、ダイレクト出力制作ではラミネートを使いません。前回記事でもご紹介した通り、UV硬化インクにはごくわずかですが厚みがあります。色のある部分は若干盛り上がり、白の部分(インクが乗っていない部分)は低くなります。この段差がラミネートになじまないことが大きな理由です。

 

しかしながら、UV硬化インクというのは耐候性が非常に高く、実は屋外でそのまま使用もできます。ターポリン等にUV硬化インク出力し、ラミネートなしで屋外にそのまま掲示するということは普通に行われております。少々引っ掻いた程度でインクが傷ついたり剥離することはなく、水で溶けるようなこともありません。UV出力にラミネートは必要ないのです。
とはいえ、白色の部分はスチレンボード表面の紙がそのまま露出していますので、引っ掻き等には強くありません。水や湿気にも弱いです。

 

一方、ラミネート(やPP加工)を施した紙だと、表面全てが保護されますので、そのようなことはありません。ラミネートを施さないとかなり軟弱ですが、ラミネートを施すならば紙貼り制作のほうが表面の強さは上になります。ラミネートのぶん、コストはかなり上がってしまいますが…

 

なお、ダイレクト出力制作ではラミネートは施さないと申し上げましたが、マット調とグロス調の選択は可能です。UV硬化インクのデフォルトの質感はマットですが、インク硬化のタイミングをプリンタ側で調整することでグロス調に変えることができるのだそうです。

 

まとめ

2回にわたってダイレクト出力制作と紙貼り制作についてご紹介してまいりました。さくっと解説…といきたかったのですが、そもそもが複雑な話で、さくっとどころではなってしまいました。申し訳ありません。ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。
しかしながら、紙貼り制作とダイレクト出力制作の違いは、この記事である程度お分かりいただけたかと思います。

冒頭でも触れたとおり、コンドットで紙貼り制作をしていますか?というお問い合わせは時々ございますが、紙貼り制作は工数とコストがかかるため、これを採用すると現在の価格と納期を実現することは難しくなります。

 

ということで、コンドットの屋内用パネルはダイレクト出力制作のみのお受付としておりますが…ここまで触れてきたように、ダイレクト出力制作においては、画質や耐久性、制作における選択肢の少なさ等、紙貼りより弱い部分もあれど、反りづらさやラミネート無しでも十分な画質が確保できる点、制作コストの低さ等、ならではの強みもあります。
それらの点を鑑み、コンドットとしては自信をもってダイレクト出力制作のパネルをご提供している次第です。

 

A山個人の感覚でも、コストとクオリティのバランスを考えると、オーダーメイドの制作ならばダイレクトのほうが紙貼りより総合点は上じゃないかなと思っております。今のUVプリンタ、ほんとにきれいですよ。パネルが必要になった時は、ぜひコンドットにご用命くださいね。

 

屋内用パネルのご注文は以下からどうぞ!

 

屋内用パネル片面

屋内用パネル両面

 

それではみなさま、今回はA山がお送りしました。
また会う日までお健やかにお過ごしください!